レコードの価値を高める要素のひとつがレコードジャケットです。「ジャケ買い」という言葉もあるように、音楽そのものではなくジャケットのデザイン性の良さを理由にレコードを購入する人も少なくありません。
今回は、名作として現在まで語り継がれているレコードを15枚に厳選してご紹介します。また、名作レコードジャケットを生み出してきた巨匠も3人ピックアップして解説していきますので、ぜひ好みのジャケットを見つけてみてください。
レコードジャケットとは
レコードジャケットとは、レコード盤を包んでいるカバーのようなものです。個性的・印象的なデザインのジャケットも多く、ジャケットはレコードの歴史を彩ってきた重要な存在といえます。ジャケットは「E式」と「A式」の2種類に分かれており、それぞれ以下のような特徴があります。
・E式
E式は「ヨーロッパ式」のことで、エンボス加工など特殊なデザインにも対応できるのが特徴です。使われる紙の種類もさまざまで、汎用性の高さも評価されており、世界中のレコードジャケットに採用されています。
・A式
A式は「アメリカ式」のことで、アメリカ国内で広く採用されたことから名付けられました。主な特徴はボール紙を使用することで、E式と比べて厚みがあります。保存で場所を取ってしまいがちな反面、丈夫で反りにくいことがメリットです。
名作レコードジャケット15選
名作と語り継がれるレコードジャケットはたくさんありますが、今回はその中でも特に評価が高いレコードジャケットを15枚ご紹介します。当時の時代背景なども併せて解説していきますので、レコード選びに悩んでいる方はぜひチェックしてくださいね。
『Abbey Road』 ザ・ビートルズ
ビートルズのメンバーが列をなして横断歩道を渡っている『Abbey Road』のジャケットはあまりにも有名です。元々はエベレストで撮影した写真をジャケットに採用する予定でしたが、ビートルズはこの手間を嫌い、当時のEMIスタジオからほど近い横断歩道で撮影を行ったといわれています。
EMIスタジオはこのレコードに合わせ、「アビー・ロード・スタジオ」へと名称を変更しました。撮影に使われた横断歩道は全世界からファンが訪れるほどの観光スポットになるほか、著名なアーティストによってパロディにも採用されています。
『Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band』 ザ・ビートルズ
架空のブラスバンドをコンセプトに作成されたレコードジャケットで、当時最高額となる制作費がかけられました。ジャケットに描かれている人物は総勢58名で、ビートルズのメンバーやロバート・フレイザーといった美術品商によって選抜されたといいます。
日本でも著名な人物としてはエドガー・アラン・ポー、ボブ・ディラン、マリリン・モンローといった面々が含まれています。あらゆるジャンルの人物を1枚のジャケットに登場させることにより、多様性を表現している点にも注目すべきでしょう。
『The Velvet Underground & Nico』 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
かの有名なアーティスト、アンディ・ウォーホルによるデザインです。「Peel Slowly And See(ゆっくり剥がして見てみよう)」という言葉が添えられているとおり、バナナのイラストには仕掛けが施されていて、表面のステッカーを剥がすとバナナの実が姿を現します。
このレコードジャケットはパンク史に多大な影響をおよぼし、一種の原点としても評価されている作品です。すでにプレミア化していますが、今後さらに価値を高める可能性もあるでしょう。
『WAR』 U2
頭の後ろで手を組み、眼光鋭いまなざしで一直線にこちらを見つめる少年の表情が特徴です。タイトルが『WAR』ということもあり、強く訴えかけるような力を持っています。
この少年はピーター・ローウェンという名前であり、ボノの弟の友人です。ローウェンは『BOY』『War』のアルバム、そしてベストアルバムの合計3枚のジャケットに起用され、U2ファンの間ではおなじみの存在であり、現在は写真家として活動しています。ローウェン本人にとっても、人生を変えるレコードジャケットとなったことでしょう。
『Nevermind』 ニルヴァーナ
下半身を丸出しにした4歳児を大胆にレコードジャケットに起用したパンク・ロックな演出は、現在ほど規制が厳しくなかった発売当時でも賛否両論を集めました。モデルとなった赤ちゃんは後にジャケットの再現写真を撮影していますが、このときはきちんと海水パンツを着用しています。
無邪気な赤ちゃんが吊り下げられた1ドル札に向かっていく様子は、「金集め」のために芸術性を放棄するアーティストへの風刺としても捉えられています。しかし、実際のところは水中出産に魅力を感じたカート・コバーンによるアイデアで、他意はなかったとの説が有力です。
『Never Mind the Bollocks(勝手にしやがれ)』 セックス・ピストルズ
黄色い背景にピンク色の帯、そして帯に記された『Sex PiSTOLS』の文字は当時でもセンセーショナルな存在として扱われていました。なぜなら、これは新聞の切り貼りを連想させるように作り込まれていて、政治犯や誘拐犯による犯行声明文さながらのデザインに仕上がっているからです。
今ではありふれたデザインのレコードジャケットに見えてしまいがちですが、その理由は『Never Mind the Bollocks』のパロディが多くのアーティストによって生み出されているためでもあるでしょう。
『Sticky Fingers』 ローリング・ストーンズ
リーバイス製ジーンズの中心部分に描かれているゴールドのファスナーは本物で、これを下げるとデザイナーである「Andy Warhol」と書かれたブリーフが現れます。ウォーホルらしい遊び心が満載のデザインで、手に取るとついついファスナーを上げ下げしたくなってしまうはずです。
『Atom Heart Mother(原子心母)』 ピンク・フロイド
「奇抜な写真を」というリクエストを受け、ヒプノシスがデザインしたカバー・アートです。ロンドン郊外の牧場で撮影された牛は「ルルベル」という名前で、Atom Heart Motherのヒット後にルルベルノオーナーが巨額のギャラを求めたものの、ピンク・フロイド側は拒絶したという逸話が残っています。
『Dark Side of the Moon(狂気)』 ピンク・フロイド
こちらもヒプノシスがデザインを手掛けたレコードジャケットです。プリズムによって屈折した光線が6色の虹を描く様子が印象的です。リマスター版ではプリズムが5つに増え、よりアーティスティックな作品へと進化しています。
『In The Court Of The Crimson King』 キング クリムゾン
キングクリムゾンのデビューを飾るにふさわしい、絶大なインパクトを残すレコードジャケットです。悲しみとも怒りとも取れる表情は一度見たら忘れられないでしょう。カバーの内側にも同じ人物が描かれていますが、ジャケットのイラストとは表情が異なり、より深いメッセージを感じ取れます。
『Aladdin Sane』 デヴィッド・ボウイ
大胆にペイントされたイナズマの模様は、スターダムを駆け上がるデヴィッド・ボウイ自身の感情を表しているといわれています。左の鎖骨には涙が描かれ、彼自身の優しさと神秘性が表現されている点も見逃せません。この写真は、後にiPhoneの絵文字として登場するほど歴史的な作品です。
『Rumours(噂)』 フリートウッド・マック
ミック・フリートウッドとスティーヴィー・ニックスのミステリアスな表情と、スタイリッシュな構図が印象的です。ミックの脚の間に挟まっている2つの玉は、ミック自身がトイレの貯水槽から持ち出したもの。一時期はライブでも実際に着用しており、ミックのアイデンティティが存分に発揮されたジャケットといえます。
『Straight Outta Compton』 N.W.A.
ピストルを構えたイージー・Eとそのほかのメンバー5人に見下ろされる独特な構図は、写真家のエリック・ポップルトンが「今にも殺されようとしている人間の視点」をテーマに生み出したものです。このピストルは本物で、N.W.Aが確立したギャングスタ・ラップを見事に表現しています。
『London Calling』 ザ・クラッシュ
エルヴィス・プレスリーのレコードジャケットをパロディ化したものですが、現在ではこのジャケットそのものが芸術として評価されています。元ネタとなったプレスリーの写真はギターを弾きながら軽やかに歌っているものであるのに対し、ザ・クラッシュはポール・シムノンが楽器を叩きつける写真を採用していることが印象的です。
『Meat Is Murder』 ザ・スミス
ベトナム戦争に参加した兵士の写真を採用しています。これはヴィーガンとして知られるモリッシーが肉食を戦争に例えたものです。元の写真には「Meat Is Murder」ではなく「愛し合わず、戦争しよう」と書かれており、元々は「戦争せず、愛し合おう」というヒッピーへのカウンター的なメッセージでした。
名作レコードジャケットを生み出したアーティストたち
印象的なレコードジャケットを生み出したアーティストは多数存在しますが、なかでも歴史に名を残しているのは「ヒプノシス」「アンディ・ウォーホル」「ノーマン・シーフ」でしょう。ここからは、これら3人のアーティストがどのような存在だったのかを解説していきます。
Hipgnosis(ヒプノシス)
Hipgnosisは1968年にロンドンで活動をスタートさせたチームです。 <Hipgnosisの代表作> ・『Atom Heart Mother』 ピンク・フロイド ・『Dark Side of the Moon(狂気)』 ピンク・フロイド ・『Electric Warrior』 T.REX 先ほどご紹介したピンク・フロイドをはじめ、レッド・ツェッペリンやT.REXといったアーティストのレコードジャケットを手掛け、日本では松任谷由実のカバーデザインも行いました。
Andy Warhol(アンディ・ウォーホル)
『The Velvet Underground & Nico』で描いたバナナのイラストはあまりにも有名です。 <Andy Warholの代表作> ・『The Velvet Underground & Nico』 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド ・『Sticky Fingers』 ローリング・ストーンズ ・『Menlove Ave.』 ジョン・レノン 日常にありふれたモチーフに焦点を当て、独特な色彩で描く作品の数々は、彼の死後にも評価を高め続けています。レコードジャケットのデザインを手掛けていたことに驚きを感じた方も多いかもしれません。
Norman Seeff(ノーマン・シーフ)
ノーマン・シーフは写真家であり、アーティストの本質や意外性を引き出すことに定評があります。 <Norman Seeffの代表作> ・『RICKIE LEE JONES』 リッキー・リー・ジョーンズ ・『HOTTER THAN HELL』 キッス とりわけ『RICKIE LEE JONES』は代表作として評価が高く、彼女の大人びた仕草と表情が音楽に付加価値をつけています。
まとめ
今回は現代でも特に評価が高い15枚のレコードジャケットをご紹介しました。実際に手に取ってみたくなるような作品や、魂が揺さぶられるような作品が数多く存在します。仕事の後や休日などにレコードを聴くときには、音楽と一緒に芸術性の高いジャケットも楽しんでみてはいかがでしょうか。 レコードシティ買取センターでは、歴史的価値を持つレコードを高値で買い取っております。一枚ずつ丁寧に査定し、レコードの価値に合った査定額をお伝えいたします。店舗での買取りのほか、査定料や送料が無料の宅配買取も行っておりますので、ご用命の際はお気軽にご連絡ください。
■買取のご相談はお任せください!
レコードシティでは、レコード・CDはもちろん、